今やスーパーやレストランで当たり前に見かける生ハムですが、ひとえに生ハムといっても価格はもちろんのこと、見た目や味の違いがあることに疑問を感じたことはありませんか?イベリコやプロシュートの違いであったり、1パック300円程度の生ハムがあれば1パック5,000円以上する生ハムがあることもきちんとした理由があります。
例えば、生ハムの原料や産地によって味の傾向があり、それを予備知識として知っておくことで「この生ハムはこの料理に使おう!」とか、「この生ハムに合わせるワインはこれだ!」ということもだんだんわかってきます。そうすることで今まで以上に生ハムを楽しめるようになるはずです。
そこで、今回は生ハムを楽しむうえでこれだけは知っておきたい!という項目を3つ挙げてみました。
原産地
まずは、生ハムがどこで作られているかを確認しましよう。大きく分けて国産と外国産があります。
国産の生ハム
国産の生ハムは熟成などはさせず、調味液で味付けを行うものがほとんどです。
熟成について、国産の生ハムと外国産の生ハムの詳しい違いはこちらをご覧ください。
最近では日本国内でも海外(スペインが主流)の製法に基づいて、豚肉と塩だけを使って1年程度の長期熟成を行う生産者が増えています。もともと日本は発酵食品が豊富にあり、例えば味噌、醤油、納豆などがその代表です。酵素や細菌、カビの力を利用して発酵熟成させ、旨味成分を爆発的に増やすことを伝統的に行ってきました。生ハムもこのような発酵食品と通ずる部分があり、塩漬けにした豚肉を菌の力で熟成させていきます。中には日本酒や味噌の麹を使って生ハムを作っている生産者もいるようです。
ただし、日本ではこのような長期熟成の生ハムはかなり少数で、調味液で味付けをした生ハムが生産量の大部分を締めています。
外国産の生ハム
一方でイタリア、フランス、スペインなど主にヨーロッパで製造される生ハムは完成までに数年の期間を要する長期熟成がほとんどです。日本と違い湿気が少なく、涼しい気候のおかげで腐敗せずに熟成を行うことができます。生ハムはもともとヨーロッパでは保存食の役割を果たしていました。
外国産の生ハムは、基本的に調味液など余計なものは加えずに作られるため、体に良いとされる成分を豊富に含んでいるとの研究結果も出ています。
同じ原料を使っても産地によってプロシュートやハモンセラーノなどと生ハムの呼び名が変わります。プロシュートはイタリア産、ハモン・セラーノとハモン・イベリコはスペイン産と覚えておきましょう。
原料
生ハムの主原料は豚肉ですが、ランドレースや大ヨークシャーといった品種の白豚が主に使われます。食卓に並ぶ豚肉は、主要な複数の品種をかけ合わせてたものが主流です。品種を掛け合わせることでそれぞれの品種の良いところを併せ持つ豚ができあがるのです。
国内の生ハムはもちろん、イタリアのプロシュートやスペインのハモン・セラーノもこのような白豚を原料にしています。
中でも、ハモン・イベリコだけはランドレースなどの白豚を原料としていません。ハモン・イベリコの原料は、通称「黒豚」と呼ばれるイベリコ豚です。イベリコ豚はスペイン(イベリア半島)原産種で、その祖先は紀元前3500年頃に イベリア半島にいたイノシシと考えられています。その血統や飼育方法などによりランク分けされるのですが、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ちなみにイベリコ豚とセットでよく使われる「ベジョータ」とは、スペイン語でドングリを意味します。ドングリをふんだんに食べたイベリコ豚のみがベジョータと呼ばれます。間違った認識をされている方が多いですが、イベリコ豚すべてがドングリを食べたわけではないのでご注意を。
熟成方法と期間
国産の生ハムは原料を調味液に漬け込むか、原料に調味液を注入して製造されます。
一方、ヨーロッパなどで製造される生ハムは塩漬け後、乾燥熟成をさせて旨味を凝縮させます。熟成方法は大きく分けて2つ。機械をつかった熟成と完全に自然の状態での熟成です。前者は管理がしやすく、手間がかかりません。逆に後者は手間やコストがかかり熟練の技を要しますが、塩が優しく馴染んでいくので大変上品な味わいになります。
熟成期間はだいたい1年から2年です。イタリア産とスペイン産の大きな違いはこの熟成期間かもしれません。イタリア産の特徴はしっとりとしていて控えめな味、スペインはより濃厚に思います。特にイベリコ豚はその良質な脂のおかげで、長期熟成に耐え得るのです。通常は3年、アルトゥーロ・サンチェスの場合は長いもので5年…。本当に気が遠くなるような長い時間です。
まとめ
生ハムにも多くの種類があることをご存知でしたでしょうか。製法が違うと全く別物のような味わいになります。普段生ハムをよく食べているという人でもなかなか製法などを気にすることはないと思いますが、この機会に少し意識していただけると嬉しいです。
原産地、原料、熟成を少し意識してみると、きっと今まで以上に生ハムを楽しめるようになります。
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